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3次元のゲノム構造

ヒトのゲノム配列の位置は基本的には染色体毎に端から端までの1次元の連続した整数の値で数値化されています。遺伝子データベースを扱っていると、遺伝子の変異などの議論は1次元の座標として扱われるため、ある遺伝子と別の遺伝子の距離はなんとなく1次元的な座標の差として扱ったときに座標の間の数字が大きいと、2つの遺伝子同士はずーっと離れているように思って議論してしまいがちです。ただ現実の核の中では、DNAは3次元的な複雑な構造をとっていると考えられていて、実際の3次元空間の中では遺伝子同士の近さはまた別に考えないといけないようです。

DNAは、H2A、H2B、H3、H4と4種類あるヒストンタンパク質が作るヒストンオクタマーに巻きついてヌクレオソームと呼ばれる構造単位を形成し、これがさらにまとまってクロマチン(ファイバー)となって、このクロマチンファイバーはより複雑な構造へと折りたたまれさらにコンパクトな形状となって核内に存在するといわれています。さらに凝集が進む場合には、最終的には染色体を形成して核内に存在すると考えられています。

クロマチンを構成するDNAとヌクレオソームは、ヒストンへのメチル化やアセチル化など共有結合修飾の形でエピジェネティック*な遺伝情報を保持し、情報を伝達すると考えられています。ヌクレオソームはゲノム上でランダムに位置するのではなく、ゲノムに接触する箇所が決まっていて、各ヌクレオソームの位置によって調節タンパク質のDNAへのアクセシビリティが決定されDNAからRNAが産生される転写が制御されると最近では考えられています。このとき、1次元としてみたゲノム上である遺伝子と別の遺伝子の距離が長く、2つの遺伝子がずーっと離れているようにみえても、実は3次元空間的にはループ構造を作っていて極めて近い場合もあるようです。

細胞内のヌクレオソームの修飾とクロマチン構造のダイナミックス、特に、転写に関連づけて最近注目されているエンハンサーやインシュレーターによるクロマチン構造のダイナミックな変化が今後は塩基配列レベルで詳細に解明されていくと思われます。

*A、T、C、Gの4塩基の配列以外にもゲノムの情報が構造化され、配列とは異なった情報ということでエピジェネティックという言葉が使われます。特に、H2A、H2B、H3、H4と4種類あるヒストンタンパク質の修飾に対してよく使われます。エピジェネティックス解析でも基本はゲノムシーケンスが重要です。

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