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遺伝子変異と3次元 ゲノムトポロジー

現在、ヒトの遺伝的変異は何百万以上同定・分類され、健康および疾患との関係、さらには進化がどう起こってきたのかを調べることが可能になってきています。ただ、重要な変異であってもそのすぐ近くの領域にある他の変異と連動して世代を超えて遺伝する場合には、病気や健康上で問題になる原因の遺伝子、あるいはその変異を同定することはまだ簡単ではないようです。

網膜疾患での大規模なゲノムワイドな関連解析(GWAS)で、200 を超える関連遺伝子が同定されているのに、主にヨーロッパの人口ではこれらの原因となる変異は患者の約半分でしか同定できていないそうです。この課題を解決しようとした試みについて、今月のNature communications*にNIHの研究者が発表しています。

論文では、遺伝子の転写を調節するノンコーディング領域での変異が十分考慮されていないと考えて、それらの変異が標的となる遺伝子の病原性を持つコーディング変異の浸透率**を変えるかどうか、異なる遺伝子座間の相互作用が一つの形質に影響する遺伝的エピスタシスを変えるのかどうか、さらにはミッシングヘリタビリティ***を説明できるのかどうかを検証しようとしています。

具体的には、すでにわかっている疾患関連の遺伝子あるいは変異に対して、ノンコーディング領域での変異がスーパーエンハンサーとプロモータの形で3次元的に疾患関連の変異と近接してクロマチンループを形成するなどの相互作用をして疾患関連の変異に影響を与えるかどうかをゲノム上で調べています。スーパーエンハンサーとプロモータの相互作用から、すでにわかっている遺伝子あるいは変異からだけでは説明できなかった「遺伝子と疾患の表現型の相関」が説明はできる可能性はあるようですが、どこまで説明できるのかどうか、今後の検証も含め大変興味があります。

*C. Marchal et al., Nature Communications, 13:5827, 2022

**浸透率:ある遺伝子に病的変異を持っている集団において、その変異が関与する疾患の発症者の割合を浸透率といいます。

***ミッシングヘリタビリティ:「ありふれた病気」で見られるような、数十個の変異が 1 つの形質に関連づけられた場合であっても、個々の変異の効果も複数の変異の複合効果も極めて小さく、これまでのゲノム解析以外から得られた従来の遺伝率の推定値を十分説明できないという事象を指します。

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