解析のご依頼にあたって

1. 当社の解析の特徴

当社は東北大学 東北メディカル・メガバンク機構の解析技術をもとにして大規模な次世代シーケンサーによる全ゲノム解析を進めてまいりました。この経緯から、ヒトの全ゲノム解析、健常人、患者様の大規模な全ゲノム解析については、2025年4月現在、3万検体近くの豊富な実績があります。さらに菌類、植物(イネ、ムギ、草木)、動物、家畜などヒト以外の生物種に対してもゲノム解析を行なっております。

弊社の特色

・ヒト全ゲノム解析では短鎖、長鎖シーケンスのどちらも、ライブラリー作成からシーケンシングまで東北大学 東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)の工程に準じて行っており、実験のバイアスを気にせずにToMMoの10万人のデータjMorpの全ゲノムリファレンスパネルとのデータ比較が可能です。

・当社は東北大学 東北メディカル・メガバンク機構認定の統合データベースdbTMM利用支援事業者ですので、当社での解析データの取得後ToMMoデータや検体を用いた継続研究の計画の立案・推進もお手伝いすることが可能です。

・東北⼤学の敷地内でインターネットとは隔離した形で国内屈指の厳しい管理下での解析を⾏っております。弊社のシーケンサーは東北大学敷地内の国内ラボにあり、国内屈指の厳しい管理のもとで解析しております。

・全国規模のお客様対応してきた経緯から、様々なアプリケーションに対応可能。

・全国の多数のお客様のリピート率は99.9%。

・短鎖シーケンスでの当社の通常の基準は、インデックスのタイプ(8bp, 10bp)に応じて、PE150以上(PE159~161)です。その他のリード長をご希望の場合はご相談ください。

・長鎖シーケンスでの当社の通常の基準は、リード長 15–20 kb、精度99.95% (Q33)、24時間のムービータイムで100–120 Gbで、メチル化、フェージングも可能です。

・各種シーケンサーのラインナップにより、最⼩75Gb から最⼤7Tb までの塩基配列データ量に対して、フローセル・レーン占有解析・相乗り解析の実施が可能であり、サンプル数の大小にかかわらず、データ処理まで安心してご依頼いただくことが可能です。

2. 受託シーケンス解析の概要

イルミナ社およびMGI社の次世代シーケンサーによる短鎖シーケンス解析:

全ゲノム解析(WGS)、RNA-Seq解析、全エクソン解析(WES)、パネル解析などバリアント解析のための次世代シーケンサーによる短鎖シーケンス解析、および空間トランスクリプトーム解析、次世代シーケンスを用いたプロテオーム解析などの応用解析

・使用機種:
イルミナ社:NovaSeq X plus(NovaSeq 6000での解析は現在行なっておりません。)
MGI社:DNBSEQ-T7、DNBSEQ-G400

PacBio社シーケンサーによる長鎖シーケンス解析:

全ゲノムシーケンス解析(WGS)、RNAシーケンス解析、全エクソン解析(WES)など長鎖シーケンサーによるシーケンス解析、および、長鎖シーケンスによるパネル解析などの応用解析

・使用機種:
PacBio社:Revio

3. 受託解析のサービスの流れ

お客様から解析依頼書をお送りいただき、当社で解析をお受けできるようになった場合、メールにてご案内差し上げます。その後、サンプルをお送りいただき当社でシーケンス解析にかかります。通常、シーケンス解析の結果は、ご希望のデータ形式で所謂完全に初期化したキーロック付きのハードディスクにてお送りいたします。
特別なご要望は、事前にご相談いただければ幸いです。
また、ライブラリー作成を含むご発注の場合には、結果についてのQCの報告書、ゲノムシーケンス解析の際のデータのQC結果も含めた標準的な報告書を当社からお送りいたします。
凍結の状態でお送りいただいた検体はすぐシーケンス解析のためのライブラリー作成に着手するのが理想ですが、当社の受託の混雑状況によりライブラリー作成までにお時間をいただく場合があります。そこで、
・検体到着後そのまま融解せずライブラリー作成直前までそのまま凍結状態を継続することをご希望される場合には、QC作業や検体のチェックはライブラリー作成の作業の直前になります。
・一方、検体の到着後すぐにQCをご希望のお客様の場合で、シーケンスあるいはライブラリー作成までにお時間をいただく場合には、お送りいただいた検体を再凍結をすることもあります。品質はほぼ保持できるはずですが、不測の事態も起こり得ますのであらかじめご了承いただければと思います。
上記の選択は、解析依頼書で行なっていただきます。
さらに詳しくは、‘ゲノムシーケンス解析サービス’ページの図:‘シーケンシング解析サービスのご提供のフロー’、および、‘シーケンシング解析のフロー’ をご参照ください。

4. 費用

シーケンサーの機種と受託サービスアプリケーションのメニュー、ライブラリーの作成の有無、深度などの解析条件、さらには、ご依頼いただく検体数の種類またその数によって解析費用は異なります。またその時々で試薬コストも変化いたします。当社のお問い合わせフォームもしくはメールにてtechservice@haplopharma.comまでお問い合わせください。

5. 受託解析のアプリケーションと納期、費用

5.1. 受託サービスアプリケーションメニュー

縦軸はアプリケーションの種類、横軸はシーケンサーの種類を示し、〇印は、弊社の受託解析サービスを示す。

アプリケーションごとの詳細な説明

WGS解析: お客様のゲノムDNAを用いて、イルミナ社 もしくはMGI社 PCRフリーライブラリを調製し、重複リードを除く、検体あたり90Gb 以上のfastqデータをお送りします。DRAGENを用いた2次解析も別途有償にてお受けしております。
(アノテーション付きVCFファイル)
RNAseq解析 (Poly-Aキャプチャー法): お客様のTotal RNAを用いて、イルミナ社 もしくはMGI社の転写の方向性情報付きライブラリを調製します。RIN値 7以上のTotal RNAから、mRNAのみを捕捉し検体あたり平均20Mリード以上をお送りします。
DRAGENを用いた2次解析は別途有償にてお受けします(遺伝子発現量カウント表)。
RNAseq解析 (rRNA除去法): お客様のTotal RNAを用いて、イルミナ社 もしくはMGI社の転写の方向性情報付きライブラリを調製します。
FFPE組織等のRNA分解のあるTotal RNAから遺伝子発現解析やpoly-Aを持たないnoncoding RNAの遺伝子発現解析が可能です。
真核生物のrRNAを含まない、検体あたり平均50Mリード以上をお送りします。
DRAGENを用いた2次解析は別途有償にて受けします(遺伝子発現量カウント表)
RNAseq解析 (kinnex法): お客様のTotal RNAを用いて、PacBio社のkinnexライブラリを調製します。8本の全長RNAを連結し、HiFi シーケンスを行います。RNAのisoform variant に着目した遺伝子発現解析が可能です。検体あたり平均 5Mリード以上を納品します。
エピゲノム解析: お客様のgDNAを用いて、アジレント社およびNEB社のMethyl-seqを行います。
リキッドバイオプシー解析: お客様のcell-free DNAを用いて、イルミナ社およびロシュ社のリキッドバイオプシーパネルを用いたライブラリ調製を行い、fastqデータをお送りします。
空間トランスクリプトーム解析: お客様の調製済ライブラリを用いて、MGI社のSTOmics (stereo-seq) 解析を行い、fastqデータをお送りします。
シングルセルRNAseq解析: お客様の調製済ライブラリを用いてシーケンス解析を行い、ご依頼に応じたデータ量のfastqデータをお送りします。
調製済みライブラリシーケンス解析: お客様の調製済ライブラリを用いて、フローセル占有もしくはレーン占有シーケンス解析を行い、fastqデータをお送りします。

5.2. 受託の形態

通常は、フローセル単位あるいはフローセルのレーン単位でシーケンスを解析いたします。

特に、少数検体での解析をご希望のお客様には、価格があまりに高くならない‘相乗りシーケンス’でのご依頼が便利です。また、通常の当社の解析結果出力の目安は、ヒトゲノムの場合、深度は30xでデータ量としては1検体あたり90-100Gbですが、コスト重視のお客様向けにご希望により1検体あたりでの平均で90-100Gbという形のご依頼、あるいはより浅い深度10xでといったご依頼も可能です。ご希望によりますが、より深い深度の解析、150x、240xなどの解析も可能です。

5.2.1 ライブラリーの作成の有無

通常はライブラリー作成からのご依頼が標準ですが、調製済みライブラリーのレーン占有シーケンスのご依頼も受け付けております。検体数が多く、かつシーケンス費用総額を小さく行いたいお客様には向いているかと思います。この場合、ライブラリー作成済みのサンプルをご送付頂く前に、ライブラリー濃度やキット情報、インデックス情報などの事前確認が必要になります。ライブラリーのQCにも依存するため、シーケンスの際のデータ量の保証は通常とは異なる扱いとなります。

ライブラリーの作成込みでのシーケンスを行うのか、あるいはシーケンスのみか:

いずれの場合でも、最大限の注意を払いつつ解析を行い、途中の結果を見ながら、お客様のご意向に沿ったシーケンス作業を進めております。

5.3 短鎖シーケンス

5.3.1. Illumina NovaSeq X Plus

ご要望の解析深度、出力としてのリード数に応じて試薬の種類1.5B、10B、25Bから選択ができます。下記の試薬を選択することにより、全ゲノム解析、RNA-seqなどのヒトゲノム解析全般、およびヒトに比べてゲノムの量が少ない生物種の各種解析に向いています。各レーンではシーケンス時に独立に異なるアプリケーションのシーケンスが可能です。

1.5Bでは1フローセルに2レーン 1フローセルで0.5TBのリード数 5検体*
10Bでは1フローセルに8レーン 1フローセルで3TBのリード数 30検体*
25Bでは1フローセルに8レーン 1フローセルで8TBのリード数 80検体*
*ヒト1検体は30x 150PEで100GBとした場合。

5.3.2. MGI DNBSEQ T7/G-400

DNBSEQ T7では、1回に最大4フローセルのランが可能です。Illumina NovaSeq X Plusのようなレーンはなく、1フローセルで1,500GBのリード数(30x で15検体*)のヒト全ゲノム解析、RNA-seq、STOmics(空間トランスクリプトーム)の解析が可能です。

DNBSEQ G-400では、1回に最大2フローセルのランが可能です。1フローセルで500GBのリード数(30x での5検体)の解析が可能です。少数検体のRNA-seqの解析、ヒトに比べてゲノムの量が少ない生物種の解析に向いています。

*ヒト1検体は30x 150PEで100GBとした場合。

5.4. 長鎖シーケンス

現在、PacBio Revioにより長鎖シーケンスを行なっております。(そのほかの機種に関しては当社では他の企業と連携することで長鎖シーケンスを行なうことも可能です。)

・PacBio Revioでは、PE長が150塩基の次世代シーケンシング技術とは異なり、数万塩基の長さを持つHiFiリードによって、従来では難しいゲノム中の反復配列、構造多型やタンデムリピート伸長など広い領域のバリアント情報の取得が可能です。

・PacBio RevioでのSPRQ(スパーク)試薬では、ムービータイム24時間で30x での検体数とフローセルに相当するセルとの関係は1セル1検体相当になります。

・各サンプルに必要なインプット最小DNA量は500ngで、Revioでは、最も希少なサンプルのHiFiシーケンスも可能です。弊社では、万一のライブラリーDNAの収量不足に備えて、5000ng以上のDNAを標準受入量としております。

・HiFiシークエンシングでは増幅を伴わないため、高いGC領域やタンデムリピートに対しても均一なカバレッジが得られます。後々の解析に使うためのDNAのメチル化を塩基対レベルで同定できます。

・後々の2次解析のために、詳細な情報であるカイネティックデータの取得サービスも行なっております。

2次解析をご希望のお客様、カイネティックデータの取得をご希望のお客様はあらかじめお申し付けください。

6. 納期

納期は通常は1.5ヶ月ですが、解析をお受けする時期、解析のサービスアプリケーション、検体数、解析の深度、情報解析の有無によって納期も変わります。年度末には解析の順番待ちが予測されますので、通常納期よりもお時間をいただく可能性が高くなります。

7. ご利用にあたっての当社からお客様へのお願い

・個人情報保護の観点から、ヒトの検体の場合には、当社へのご依頼の場合には、お客様のご所属の機関による倫理委員会の承認が必要です。

・当社にお渡しいただいたサンプルの品質が当社の解析基準に満たない場合には、解析の進め方についてご希望に添えない場合もあります。何卒ご承知いただきたく思います。

・また、当社が解析結果を入れてお渡しする際に利用する情報基盤、あるいはキーロック付きのハードディスクなど、お客様が別のゲノムデータを万が一にも復元しないよう通常利用の範囲にお留めいただくことをお願いしております。

8. 研究用途

現在のところ、当社の解析は研究用途限定(RUO: research use only)となります。

研究用途以外のご利用の場合も、他の受託会社との連携も可能ですのでご相談ください。

9. お問い合わせ先

Mail: techservice@haplopharma.com
Tel: 022-272-2275
株式会社ハプロファーマ 中央研究所・ゲノム解析センター
〒980-8575 宮城県仙台市青葉区星陵町2-1 東北大学医学部5号館 1階